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GW自由研究 – なぜ日本の路面電車は廃れたのか

投稿日:2017年5月7日 更新日:

路面電車と言えば古き良き昭和の乗り物、というイメージですよね。
広島や函館など、一部ではまだ運行が続いている路線もあるものの、それらは「昭和の臭いが残っている」というような扱いです。
以前ブラタモリで祇園の回を見ていて、昔は四条に路面電車があったという話がありました。
そこで、「どうして今は路面電車がなくなったんだろう」と思ったのでちょっと調べてみました。

ちなみに自分は鉄道オタクでもなんでもないので、間違った知識とか単語とか大量にあると思います。見逃してください。

要約

  • 路面電車は戦前・戦中に多く作られ、戦後のピーク時には70を超える路線が存在した
  • 元々道路の主役は路面電車だったが、戦後のマイカーブームによって道路の主役が自家用車へとシフトした
  • 道路を大きく専有する路面電車はだんだんと肩身が狭くなり廃業を強いられていった

路面電車とは

定義

路面に軌道を敷き、それを走行する電車のこと。
一般に、軌道の上空に張った架線から電力を供給して動く。
その多くが市営だったことから市営電車または市電と呼ぶこともある。また、チンチン電車とも言う。
類似の交通機関として、架線から電力を供給するトロリーバスがある。

役割

通勤などの市民の足として、バス以上・鉄道未満の公共交通機関として多様されていた。

路面電車の発展

発展の経緯

日本初の路面電車は先述のブラタモリでも取り上げられていた京都市電で、その営業開始は1895年と古い。
実は日本のバスの定期運行は1905年が始まりであり、バスよりも路面電車の方が古い乗り物にあたる。
路面電車は軌条と架線を敷くためバスよりも初期投資額が高い交通機関であったが、当時のバスは低出力・低燃費であり現在のバスと比べて小型なため、ランニングコスト的および定員数では路面電車が大きく優位であった。
そのため多数の乗客が見込める都市部においては路面電車が広く普及し、戦後昭和30年ごろには70を超える路線が存在していた。らしい。

ピーク時の背景

太平洋戦争末期の様子は様々な媒体で扱われているためおおよそ想像が付くとは思うが、当時まだ自動車は一般家庭に普及していなかった。
車と言えばトラックやバス、企業の商用車というのが一般的だった。
内閣府の消費動向調査によると、昭和36年時点での乗用車の普及率は2.8%。
当時の日本は高度経済成長の真っ只中であり、総務省統計局によると人口約9500万人のうち約4500万人が就業者であった。
これら莫大な就業者の通勤を支えていたのが他ならぬ路面電車であった。

路面電車の衰退

マイカーブームの到来

転機となるのは昭和39年の東京オリンピック。大規模な交通整備の末にマイカーブームが到来、一般家庭に乗用車が普及するに至った。いわゆる新三種の神器、3Cである。
その結果、昭和46年には乗用車の普及率は26.8%まで急激に増加した。自動車の生産台数は経済産業省の生産動態統計年報に記述があるが、過去に遡って追うのが難しいため、環境省作成の平成14年版環境白書にある図表を元に論じると、昭和36年では生産台数10万台前後だったところ、昭和46年には400万台近くを生産するようになっており、猛烈な勢いで自動車を生産したことが分かる。

道路の主役の交代

急速な自動車の普及により道路には自家用車があふれることとなり、道を専有する路面電車の立場は狭くなっていった。
吉川文夫著「路面電車時代」では、「昭和30年代は路面電車の写真が撮りやすかったが、その後自動車が増えたために自動車が路面電車に重なって写真が撮りづらくなった」と語っている。

一応アフィリエイトを出しておくので俺に小遣いを恵んでもらえる方は買ってほしい。まぁ、多くの場合は図書館で見つかると思う。

さておき自家用車が道に溢れたことで路面電車の立場は急激に悪化、乗客は減るわ車から邪魔者扱いを受けるわの散々な有様であり、採算が取れなくなった路線から徐々に廃業に追い込まれていった。

個別の路線における廃業理由の分析は、関西大学の宇都宮教授が「多変量解析による路面電車・LRTの分類と考察」(運輸と経済 2002年6月号)で纏めておられるらしいが、残念ながら該当の雑誌を入手できなかったため内容は未読である。申し訳ない。
図書館で読むことのできた「路面電車ルネッサンス」においては、「廃業するべくして廃業した」路線とは別に、「採算が取れていたはずなのに何らかの理由で廃業した」路線も存在するという。

路面電車のその後

地下鉄・バスに分業した路面電車

先述の京都市電は昭和53年に廃止後、昭和56年には京都市営地下鉄烏丸線が開業した。その後平成9年に東西線が開業している。
大阪市電も昭和44年に廃止しているが、当時既に大阪市営地下鉄の御堂筋線・谷町線・四つ橋線・中央線が開業済みであった。

また、技術向上により大型のバスが多く登場したことから、軌条・架線の必要がないバス路線への変更も多くみられた。
(なお、バスはバスで自家用車普及のアオリを受けて衰退している)

LRTとしての路面電車

北米やヨーロッパを中心にいわゆる「チンチン電車」と呼ばれる旧式の路面電車ではなく、近代的な路面電車が流行している。
このような路面電車をLRT(Light Rail Transit)と呼ぶ。
正確な定義や区別はあまり詳しくないが、複数車両による運行であったり、低床であることや、見た目がイケている場合にLRTと呼ばれやすい。
日本でも広島電鉄宮島線や阪堺電気軌道などはLRTの区分として扱われ、近代的な車両が運行している。
また、かつてチンチン電車だったことのないLRTとしては富山ライトレールなども存在する。

おわりに

路面電車は日本では衰退した一方、世界的にはLRTという形で路面電車を再燃する動きが起きている。
近年のLRTの普及は都市部の道路が既にパンク状態であることに起因していると思われる。
交通手段としての輸送力の高さが自家用車<バス<路面電車<鉄道の順であるため(近代的な表記としてはバス<BRT<LRT<鉄道)、道路に流れる車両をより輸送力の高い交通機関へとシフトさせようという動き…だと思う。

今後の計画としても、宇都宮市が2019年12月の開業を目指してLRTを整備している。
いまもう一度、路面電車の時代が来るのかもしれない。

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