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VTuberは既に保守運用フェーズに入ったのかもしれない

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※この記事は全面的にグチです。

VTuber文化と技術

二年前、あるいは三年前、VTuberは新しかった。
まるでアニメやゲームの登場人物のような3Dキャラクターが飛んで跳ねておしゃべりをする動画がYouTubeに投稿され、時には生配信をした。それだけで新しかった。

生身の人間ではなく仮想空間内のキャラクターでありつつ、既存のアニメ作品のようにガチガチの脚本や演技に縛られず、「ナマっぽい」動画を作っていること。
どこかの大企業や見知ったゲーム会社・アニメ会社ではなく、名前も知らない中小企業によって運営されていること。

それは新しい文化の誕生と、それに伴う新たな技術の創生を予感させた。簡単に言うと、未来を感じた。

そして今、キズナアイの誕生からほぼ四年、2018年のブームから二年半、もうVTuberという文化・技術の「開発」は終わりを迎えつつあると思う。

色々な文化や技術が生まれた。3Dで言えばVRMという共通規格が生まれたことが一番大きい。
これにより、ライブプラットフォームがいくつも生まれ、大抵の3DVTuberは互換性を気にせずに色々なプラットフォームで配信を行うことができる。
2DにおいてもLive2D+FaceRigの配信スタイルは大流行し、変態的なテクニックで作成されたLive2Dモデルが色々な配信を賑わわせている。

しかし、もう、これから先、とんでもない技術革新が生まれるかという望みは薄くなってしまったかな、と思う。
なぜなら、視聴者が技術革新を望んでいないから。いまある配信で十分に満足しているから。

これから先のVTuber業界に必要なのは、配信者(魂)の個性であって、技術的なアドバンテージではない
仮に、なにかとんでもないVTuber技術を持った企業が現れたとする。
えーと例えば、「現実空間にホログラムで出現できるVTuber」とか。できたらすごいよね。
でもそんなVTuberが生まれたとして今のホロライブやにじさんじの人気配信者よりも人気を稼げるだろうか。おそらく無理だろう。既に大勢は決したと思う。
逆にホロライブやにじさんじを運営する会社が、そのような技術開発を自分で行うだろうか。しないだろう。「新しいこと」をしなくても十分に儲かっている。

もう満足なのだ。現状で良い。映画やテレビの世界で3D作品が流行らなかったのと同じ
技術的にスゴくて新しいものなんて要らなくて、ユーザーが求めているのは今あるもののクオリティを上げることなのだ。

開発フェーズ・保守運用フェーズ、というのは、主にシステム開発で使われる単語だ。
ユーザの求めているものを模索して、コンテンツを作り上げるのが開発フェーズ。
作り上げたコンテンツを日々運用して、たまにはユーザの最新の声を反映して機能を追加するのが保守運用フェーズ。

技術屋として面白いのは、もちろん開発フェーズだ。どんな技術を開発しよう。どんな機能を作ろう。色々なことを考えて、作って、いざリリースするとユーザーから褒められたり、ボロクソにけなされたりする。とても楽しい。
保守運用フェーズなんて、言ってしまえばルーチンワークだ。日々同じような項目をチェックするばかり。
新しいことなんて全然起きない。ユーザーは満足しているかもしれないが、技術屋としては生きながら死んでいるようなものだ。

VTuberという文化は、既に開発フェーズが終わってしまったように思う。
技術的に新しいものはもう求められていなくて、既に作り終えた技術を使って配信者が日々のコンテンツを作り続けるだけ。
もう、技術屋はVTuberを支える技術開発なんてしていないのではないだろうか。
新しい3Dモデルを作る、Live2Dモデルを作る。配信アプリのバージョンアップ。そういう仕事はあるだろう。
しかしそれらは保守運用フェーズにおける仕事であり、開発フェーズの内容ではない。

技術屋は既に、VTuberに飽きてしまっているのかもしれないなぁ。と思った。

-バーチャルユーチューバー

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