2017年~2018年の年末年始にVTuberという存在がブレイクして、どういうわけか一年間も流行が続いている。俺はと言えばこのサイトでも岩本町芸能社やキズナアイちゃんについて度々取り上げていて、TwitterではVTuber業界の行く末を真に憂う者などと恥ずかしい自称をすることもある。
そもそも事の発端はキズナアイであり、そのフォロワーとして電脳少女シロが続いた。この二人がブレイクしたとき、中心となる視聴者は重度のオタクだった(わたしのことです)。VTuberというのは、これまでユーチューバーに見向きもしなかったオタクくんたちをターゲットに展開されたコンテンツだ。
なぜオタクくんたちは既存のユーチューバーを見なかったのか。それはオタクくんは二次元の美少年・美少女キャラクターにしか興味がなく、三次元の世界に住む人間はアニメ声優しか知らないからだ。ヒカキンとかいう人間が世界に居ることは知っていても、全くもって興味がない。
そこでVTuberが出てきた。オタクくんは二次元の美少女キャラクターの延長上にあるキズナアイに興味が湧いた。動画を見た。オタクくんたちはこのとき初めて「ユーチューバーを見る」という娯楽に触れた。だから盛り上がった。ユーチューバーとVTuberには視聴者層の壁があった。
一方でVTuberに「なる」側はどうか。2017年にはぽつりぽつりとしか居なかったVTuberは2018年に大発生した。なぜか。「VTuberになる方法」が急速に整備されたからか。それもあるだろう。しかし本質はそこではない。
これまでユーチューバーではなかったが、VTuberであればなってみたい、という「魂」が数多く居たからだ。配信でのリアルバレのリスクが怖かったとか、自分の顔や容姿に自信がないとか、そういう連中がこぞってVTuberになった。俺の想像でしかないが。
あえてバーチャルを選ぶ魂は、実力がある者が多く、また、視聴者であるオタクくん達との親和性も高かった。要はVTuberの魂もオタクであった。もちろん、そうでないケースも数多くあった。しかし実力のないものは自然淘汰され消えていった。
一部の初期企業勢はあまりオタクではない魂を呼び込んでもいたが、外面はオタク受けするように仕込んであったと思う。明確にそうでないと言えるのはときのそらちゃんぐらいのものではないか。
そして場が盛り上がるにつれて、俺にとってつまらない方向性へと発展が進んできた。一般人に存在がバレたのだ。VTuberというものを、オタクくん以外も視聴するようになった。
するとどうなるか。当たり前だが、世間の人間をオタクと非オタクに分けたとき、非オタクの方が人数が多い。「VTuber」という場のマジョリティが非オタクに取って代わられるのである。
非オタクは何か悪いことをするか?しないだろう。しかし、俺のようなオタクくんにとって、非オタクというのは決して相容れない感性の持ち主だ。
VTuberが、だんだんと、非オタクに支持される方向へと進んでいく。
「魂」もそうだ。これまではオタク受けの良い魂が優位だったのに対し、だんだんと一般受けする魂が優位へと変わっていく。
社交性があり、流行りの歌に詳しく、誰もがプレイするゲームを遊び、覇権アニメを好んで見る。
VTuberと、普通のユーチューバーの境目が薄れてくる。
「誰が見ても楽しい動画」をたくさん作る。そしてたくさんの非オタクがそれを見る。
昔、昔といっても一年前、当時のVTuberは、「VTuberしか見ない人」と「VTuberにしかなれない人」のコンテンツだったと思う。
今のVTuberはそうではなく、「なんでも見る人」がメインターゲットで、「バーチャルの皮をかぶったほうが人気が出るからVTuberになった人」がコンテンツを作っている。
売れるVTuberというのは、一般的な感性で見たときに面白いことをする人、きちんとした営業活動に励んでいる人のことを指す。
いいことか悪いことかは各自の感性だと思う。俺も、理性的な目で見れば業界の発展の象徴として喜ぶときもある。
しかしいつの間にかマジョリティを取って代わられ、俺とは違う感性の人向けに業界が発展していくのを、あまり面白く思えないときもある。
そんな中でも俺はまだ10人前後のVTuberを一応応援していて、彼女らが配信をすると言えば見に行くようにはしている。ただ、毎日毎日誰かしらが配信するために俺の可処分時間はどんどん削られている。そこで知らない曲の歌唱動画を上げられたり、よく分からん雑談配信を一時間も二時間も続けられたりしていくのを見ると、「あれ、俺はこういうコンテンツは嫌いではなかったかな?」と思う。「もしコレがニコ生で、配信者がバーチャルではなかったら、俺は5秒も見ずにブラウザを閉じるのでは?」と思う。
俺は新しもの好きで、だからこそVTuberも早い段階から追いかけてきたが、しかしそろそろVTuberというのは新しくないモノへと堕ちてきているように見える。
VTuberが流行から脱却し、一つのコンテンツとして認められるとき、そこに待つのは他のコンテンツとの競合である。
はたしてVTuberは、漫画や、アニメや、ゲームと肩を並べられるほど面白いのか。
それとも、ヒマを持て余した一般人しか見ないようなコンテンツになってしまうのか。
オタクくんである俺にとって、この業界が俺好みの方向へ進むようには見えなくなってきた。