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いま生成型AIについて思っていること

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いきなりではあるが、新しい技術について法律というのは整備が追いつかないものである。
私は特に法律の専門家ではないが、法律というのは、倫理観が先行して形作られ、倫理観の明文化として法律が生まれるものだと思っている。

一言で説明してしまえば、いま、生成型AIについては法整備が追いついていないどころか、倫理観すら定まっていない、というのが現状だと思っている。
そのため、今回は「現行法がどうなっているか」ではなく、「どのような倫理観を持つべきで、どのような法律があるべきか」という話をする。

特にお絵描きAIについて、法律で許される・許されていないを全て無視してどうあるべきかを考えたとき、今は「私の絵をAIに学習されたくない」という絵師の声が数多く聞こえている。
なおこの意見はいくつか派閥があるが、最初は、「私の絵柄を完全にコピーしたAIを作ってほしくない」という意見ではなく、「私の絵柄をコピーするかどうかを問わず、AIに学習されること自体が嫌だ」という意見だとする。
この声は、一人ひとりの人間の感情として尊重されるべきではあるが、しかし何らかの倫理観に基づく意見かというと、私はこの声について、一般的な倫理観から当然生じる意見だとは思っていない。
ここについて詳しく説明する。

「私の絵をAIに学習されたくない」というのは、より一般的に言えば「私の仕事の成果を使って、私の仕事を奪うものを作らないでほしい」という意見である。
これを何らかの倫理観らしい表現に置き直すなら、「他の人の仕事をジャマしてはいけないよ」ということになるだろうか。
仕事のジャマをしてはいけない、と書けば、なるほどその通りだと感じる。妨害行為はよくない。
しかし、AIは絵師の妨害行為のために学習するのだろうか。違うだろう、AI自身に何らかの絵を描かせることが目的だ。普通は。
であれば、これをより正確な表現に置き直すと、「他の人の仕事を参考にして、仕事をしてはいけないよ」ということになる。
そんな倫理観があり得るだろうか。
どんな絵師だって、絵の練習として何らかの絵を模写したり、構図の取り方を勉強したりして画力を上げてきたと思う。
そういう行為が、人間には許されるのに、AIには許されない、というのはおかしいと思う。

確かに、絵師にとって、お絵描きAIの登場で自分の仕事が奪われるかもしれない、というのは死活問題である。
が、技術の発展によって、仕事のやり方が変わったり、特定の職業が衰退することは、実際よくあることだ。
AIに仕事が奪われる事自体を、倫理観をもって封じたり、それをルールとして整備することは、あまり現実的ではない。

しかし一方、話を「私の絵柄を完全にコピーしたAIを作ってほしくない」という意見に切り替えるとどうだろうか。
これは特定の個人に対する、その個人が築いてきた絵柄というブランドの盗作である。
他人の絵柄をコピーしたAIを作り、本来その人に金銭を支払って描いてもらうはずの絵をAIに描かせて利用したり、その人のブランドにタダ乗りしてAI出力イラストの画集を販売する行為は、それがAIであるかどうかを問わず許せる行為ではない。
これは「他の人になりすまして仕事をしてはいけないよ」という倫理観からくるもので、著作権法によって明文化されている。と思う。(絵師の画風や絵柄が翻案権の対象になるか、というのはここでは議論しない)

さて、「他の人になりすます」というところに焦点を当てたとき、通常は人間が他人の絵柄をコピーすることは容易ではない。
実際に有名な漫画家、たとえば手塚治虫先生や藤子・F・不二雄先生の絵柄をコピーすることで人気を得ている方もおられるが、それは努力の賜物として絵柄をコピーしているとみなされる。
また、本人に成りすましているわけではないため、モノマネ芸人の一種として、イタコ漫画家などと呼ばれて肯定されている。
もちろん、そういった努力や敬意を伴わない、いわゆる「トレパク」については、人間vs人間の場合も厳しく非難され、頻繁にネットを騒がしていることはご承知の通りである。(繰り返すが、トレパクの著作権法上の扱いは議論しない。あくまで一般的な倫理観としてアウトであるということ)

しかしAIは、ごく短時間で絵柄をコピーでき、さらに「トレパク」にとどまらないレベルで「既存絵師が描いた新作イラスト」に見せかけることができる。
したがって、AIによる絵柄のコピーは、「トレパクを技術的に発展させたもの」と捉えることができるのではないか、と思う。
そういった、「他の人になりすますことを目的としたAIモデル」は、倫理的に言って存在するべきではなく、法律による規制があって然るべきではないかと考えている。

と、いうわけで、「他の人になりすますためのAIモデル」は規制すべきだが、それ以外のAIモデルは許されるべきであり、AIが他人の著作物を無断学習することについても、学習に使うこと自体は許されるべき、というのが今の私の考えである。
ここで問題になってくるのが今の汎用AIモデルの挙動である。汎用AIモデルに「○○さんの絵柄で出力して」と指示すればそれが叶ってしまう現状は、やはり良くはないかもしれない。
そこで例えば、以下のような規制は必要になるかもしれないな、と思ったこの頃。

  • 特定の人物や団体の絵柄を模倣する目的のAIモデルを作成してはいけない
  • AIモデルの学習に際して、原著作者を識別できるラベルを付与してはいけない

この分野は日進月歩で進化している最中であり、今後数年のうちに世界的に共通の倫理観が醸成され法整備が進むと思われるが、私はとにかくAIによって社会が豊かになっていてほしいと思う。

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